茨木のり子さんのこんな詩もありますよ。
「自分の感受性くらい 」
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを
友人のせいにするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
。.:*:・'°:*:・'。.:*:・'°:*:・'。
「ええと」
「あの人は世に出た」
と羨ましそうに言う
その道でいっぱしになり
有名になり
お金もばかすか入ることを指すらしい
私はこの言いかたが気に入らない
不正確ではなかろうか
フギャア!と一声泣いたとき
人はみな この世に出たと思うのだ